経営再建中の東芝は31日の取締役会で

経営再建中の東芝は31日の取締役会で、半導体モリー子会社「東芝メモリ」の売却先を協業先の米半導体大手ウエスタン・デジタル(WD)陣営に決められなかった。最終合意に向けた協議が難航している上、米ファンドのベインキャピタルが主導する「日米韓連合」が米アップルに将来的に最大34%の議決権を付与するなどとする新たな買収提案をして巻き返しに動いたからだ。東芝はWD陣営と台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業を含む3陣営と交渉を続けることにし、目指していた8月中の決着を見送った。

 東芝は取締役会終了後、WDへの独占交渉権の付与について「検討はしたものの、開示すべき決定事項はなかった」と発表。9月以降も3陣営と交渉を続けることを決め、早期の売却契約の締結を目指す。

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 WD陣営は、米ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)、官民ファンドの産業革新機構などが参加して2兆円規模で買収案を提示。東芝は売却を巡り対立が続いてきたWDとの交渉で歩み寄りがみられたため、8月中の売却に向けて詰めの交渉を続けてきた。だが、将来的な東芝メモリの経営への関与度を巡り、双方の溝が埋まらなかった。

 一方、6月に優先交渉先に選ばれながら、交渉が難航していたベインキャピタルや韓国半導体大手SKハイニックスなどの日米韓連合が29日、アップルを連合に加え、WDとの係争が解消できなくても買収を実施すると新たに提案した。アップルが重要議案に拒否権を持つ最大34%の議決権を握る可能性がある一方、SKは議決権を持たずに将来的にも支配権を持たないことを確約し、WDにも将来は株式の一部を譲渡することを盛り込んで同社との融和も狙った。

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 アップルが参加したのは、アイフォーンなどに東芝のメモリーを使用しており、安定調達を図る狙いがあるとみられる。

 この提案が、WDとの係争に頭を痛める東芝にアピールした。また、鴻海も新提案を出す可能性があり、東芝は取締役会で2陣営も加えて検討することを決めた。

 東芝は来年3月末までに売却資金を調達し、負債が資産を上回る債務超過を解消しなければ上場廃止に追い込まれる。ただ、売却には半年以上かかるとされる各国の独占禁止法審査をクリアする必要があるため、東芝を資金面で支える主要取引銀行などは今年8月末までの売却先決定を求めていた。2陣営の提案を検討するには一定の時間が必要なため、決定は大幅に遅れる可能性もある。【古屋敷尚子、坂井隆之】